grizzly foot small 田口洋美氏の著作案内
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 越後三面山人記表紙

 「越後三面山人記」〜マタギの自然観に習う〜
  著者/田口洋美
  発行/(社)農山漁村文化協会(エ03-3585-1141) ¥2,800

 越後三面(えちごみおもて)は山形県境と接した朝日連峰の奥深くにあり、新潟県の中でも特に自然に恵まれた山村の集落であった。ダム建設の犠牲となり、数百年の歴史と文化を刻み続けてきた、マタギ集落・三面は1985年(昭和60年)に閉村した。

 著者は民族文化映像研究所時代に姫田忠義氏に師事し、長編記録映画『越後奥三面ー山に生かされた日々ー』の製作に助監督として携わっている。この本は、1982年冬から1985年晩秋までに、彼が三面に通い続け、自らの足で、目で、耳で、手で三面の人々から聞き取りした記録である。

 田口洋美氏は、現在マタギの研究家として、狩猟文化の研究家として活躍している。また、ツキノワグマ研究家の米田一彦氏(日本ツキノワグマ研究所代表)の勧めで、日本狩猟文化研究所を1996年に開所している。その彼が、三面の山人(やまんど/秋田県阿仁町ではマタギと呼ぶ)達とクマ狩りに同行した際、雪渓を滑落し、九死に一生を得るという貴重な経験をしている。

 ロシアの北方狩猟民族の調査にも、ここ数年関わりを持ち、アルセーニエフの書いた『デルスー・ウザーラ』の舞台になった、沿海州奥地にも足を運んでいる。彼がマタギ・狩猟文化の道を歩む一つの原点になったのが、三面集落で過ごした日々だったのではないだろうか。





 マタギ表紙

 「マタギ」〜森と狩人の記録〜
  著者/田口洋美
  発行・慶友社(エ03-3261-1361) ¥3,914

 秋田県北秋田郡阿仁町は、マタギ発祥の地と言われている。

 田口洋美氏はマタギ、特に旅マタギについて調査を長年続けている。越後三面、長野県秋山郷の調査の過程で、それら集落のマタギ達の祖先と、阿仁町のマタギ達との関わりがおぼろげながら見えてきた。それほど遠くない時代まで、阿仁のマタギは各地を旅しながら、西は奈良県、北はカラフトまで足跡を残している。

 フィールドワーカーで、旅人である著者が、阿仁町で出会った人々から聞いたマタギ集落の暮らしや文化、マタギ達と同行したクマ狩り、現役のマタギ達から聞いた逸話などをまとめた本である。学術書のように難しくなく、学術書よりも遙かに奥の深い、とても読みやすい本である。

 表紙には、私もとても尊敬している鈴木松冶翁(マタギのシカリ/統率者)が、ライフルを持ちしゃがんでいる写真が載っている。阿仁町営熊牧場の初代場長だった鈴木松冶氏の協力がなければ、熊撃退スプレーの忌避効果を調べる実験を、阿仁町営熊牧場で行えなかったと思う。「頭撃ちの松」の威名で知られる鈴木松冶翁の逸話も、この本に収録されている。「越後三面山人記」と並んで、マタギ研究者やクマ研究者、民族学研究者のバイブルになっている1冊である。

 「ブナ林と狩人の会」(マタギサミット)の世話役としても、彼は長野県、新潟県、山形県、福島県、宮城県、岩手県、秋田県、青森県の各地に散らばるマタギ集落を旅して回っている。








 フィールドワークを歩く

 「フィールドワークを歩く」〜文化系研究者の知識と経験〜
  編集者/須藤健一  執筆者/田口洋美・他36名
  発行・嵯峨野書院(エ075-391-7686) ¥3,605

 インターネット全盛の時代、部屋にいながら世界中のありとあらゆる情報が、パソコンのモニターに瞬時に現れる・・・・本当にそうだろうか?

 インターネットからは土の香りや、人々の息づかい、心地よい春の陽射しや、ブナの森をトレッキングするときの爽やかさ、ツキノワグマと突然であった後の、あの緊張感は伝わってこない。

 「フィールドワーク」、自分の足で歩き、手で触り、目で見て、耳で聞く、舌で味わうのもよし、肌で感じるのもよし。38人の各分野のフィールドワーカーが語る、フィールドワーカーを目指す人のガイドブックである。

 田口洋美氏は、“2.民族学|環境「あるく, みる, きく」驚きと発見の現場から”を執筆している。