米国・ニュージャージー州のクマ対応

2002.03.19


 米国・モンタナ州在住の亀山明子さん(モンタナ州立大学4年生 Fish & Wildlife Management専攻)から寄せられた、米国東部のニュージャージー州(NJ)のブラック・ベアー対策の一部についてご紹介します。

 NJでは住宅地などに出没するクマを3つのカテゴリーに分類してそれぞれに対策手段を定め、これをもとにスタッフが出没対応を行なっているとのことです。
 実際のクマ対応は簡単に3つに分類できない場合も多いかもしれませんが、複数の人間がクマ対応を行なう場合には、ある程度の基準は必要ではないかとのことです。
 以下の文章は、Proceedings of 16th Eastern Black Bear Workshop (March 25-28, 2001, Clemson, SC)の"New Jersey Status Report" by Patrick C. Carr (p45-50) から抜粋したものを、亀山さんが要訳したものです。


『米国・ニュージャージー州のクマ対応』

                           亀山 明子
                           モンタナ州立大学4年生 Fish & Wildlife Management 専攻


ニュージャージー州のクマとのトラブルに関する住民からの通報件数は、1995年は285件だったのが2000年には1375件に増加。2000年の推定被害総額は200,000ドル。2000年は37頭のクマが町に出没したり物を壊すなどで生け捕り捕獲され、8頭のクマが駆除された。

2000年に州の野生生物管理局ではブラック・ベアー対策方針を作成し、2001年1月から200人の法執行官(警官や猟区管理官?)と州立公園のレンジャーに対しクマ管理活動のサポートをするための訓練を実施。


ブラック・ベアー対策方針はクマの行動を3つに分類。

人の安全に重点を置き、クマによる被害を最小限に抑えながらクマの個体群を発展させる管理を行う。


<カテゴリー1>

カテゴリー1のクマは人命や財産を脅かす性質を持った個体で、以下に記された許容されない行動に関連した個体がこのカテゴリーに区分される。


・ 人の負傷または死亡させる攻撃を行った場合。

・人の居住空間(居住地、テント、キャンプ施設)に侵入または侵入を試みた場合。居住地とは住宅とその周囲の庭、付属するゴミ箱を含む。網戸、窓やドアの破損が認められた場合はクマの侵入の有無を問わず侵入を試みたと判断される。

・自動車内への侵入や侵入を試みた場合。

・大型・小型の家畜を襲う、又は死亡させた場合(大型家畜とはウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ラマ、アルパカ、飼育下のシカ類など。小型家畜とはウサギ、ニワトリ、ガン、アヒル、シチメンチョウ、その他水鳥)。

・ペットを襲うまたは死亡させた場合。

・クマが人と10フィート以内の距離に達したなかで人馴れまたは攻撃的な行動を取った場合(ブラフ・チャージ、人の後に付いて行くまたは追いかける、人が接近した場合に従順でない行動をとる、人がクマを追払うために音を立てたり攻撃的な行動をとっても反応を示さない等)。

・柑橘畑、苗木畑、ブドウ畑、作物畑、養蜂場への被害を与え、WCU職員がクマによる被害と判断・文書記録された場合。

・ビルや家、倉庫、車庫、車両、家庭菜園、果樹、観葉植物などへの(所有者が推定した)被害額が500ドルを越える場合。


カテゴリー1に区分されたクマに対してWildlife Control Unit(WCU)の職員、そしてクマ対応訓練を受けた地域の法執行官と州立公園レンジャーは直ちに駆除を実施する事ができる。



<カテゴリー2>

カテゴリー2のクマは人間にとって迷惑になる行動をとるが、人命や財産を脅かさない個体。以下に記された行動を示した個体がこのカテゴリーに含まれる。


・学校施設、スクールバス停留所、公園、キャンプ場、レストランなどへ執拗・反復的に訪れるまたは接近し(土地所有者がWCU職員のアドバイスに適切に従った後、2回以上出没)、かつカテゴリー1にある行動を示さない場合。

・ ゴミ箱を食糧供給源として繰り返し・常習的に利用した場合(土地所有者がWCU職員のアドバイスを適切に実行した後、2回以上出没)。

・居住区にある鳥の餌台を繰り返し破壊した場合(土地所有者がWCU職員の勧める処置を適切に取り入れた後、2回以上出没)。

・ビルや家、倉庫、車庫、車両、家庭菜園、果樹、観葉植物などへの(所有者が推定した)被害額が500ドル以下の場合。


カテゴリーに区分されたクマに対しWCU職員、クマ対応訓練を受けた法執行官と州立公園レンジャーは忌避学習付け対応を実施する事ができる。忌避学習付けが行えないカテゴリー2のクマに関してWCU職員は罠を設置する場合もある。


<カテゴリー3>

カテゴリー3のクマは通常のクマの行動を示し、人に対し迷惑または脅威にならない個体で、このカテゴリーのクマは地域の警察官によって忌避学習付けは行われるべきではない。通常、これらのクマは一般市民や地元の(クマ対応?)関連機関職員によって観察が行われ、WCUへ報告される。遭遇した経験がない通報者はこのタイプのクマの行動を迷惑または脅威とみなすかもしれない。以下に記された行動を示した個体がこのカテゴリー3に含まれる。


・ 住宅密度の高い地域内を徘徊する分散中の個体。

・ 農村や郊外の地域を通り抜ける途中の個体。

・ハンター、ハイカー、キャンパー、その他クマの生息地内の施設を利用している人。

・ 鳥の餌台やゴミ箱を低い頻度で利用する個体(鳥の餌やゴミに対する依存度の低いクマ)。


カテゴリー3のクマが特定の場所へ再び訪れてそこの食糧源を繰り返し利用しない限り、その個体は迷惑または問題グマとはみなされない。WCU職員はカテゴリー3のクマとの遭遇の通報者に対してクマ被害防止対策手段についての専門的アドバイスを行なう。住民がWCU職員から受けたクマ被害防止対策のアドバイスに従わなかった場合、カテゴリー3のクマがカテゴリーのクマとしてみなされることはないだろう。




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