軽井沢町(長野県)訪問記 gif

(有)アウトバック
代表取締役 藤村正樹


 平成12年11月末に、米国モンタナ州から来日したグリズリーベアの専門家を案内して、長野県軽井沢町の星野リゾートピッキオを訪ねました。
(株)星野リゾートは軽井沢でも老舗のリゾートホテルですが、自然保護や環境問題、野生動物との共存策に積極的に取り組んでいるユニークな企業です。その星野リゾートには1992年に作られた、「ピッキオ」という軽井沢の森を中心に野生動植物の調査を続けながら、ネイチャーガイドと自然観察会や探鳥会などのイベントを通して、自然についての解説をしてる専門セクションがあり、現在15名の若者が活動しています。

 国際的にも有名な別荘地の長野県軽井沢町ですが、近年クマの出没が著しく増え、大きな社会問題となっています。人間の出すゴミの味を覚えたクマは、夜になると町中や別荘地、観光施設やキャンプ場などに出没し、生ゴミやゴミ箱などを荒らしています。そこで、軽井沢町では地元の民間企業やボランティア団体と協力して、ユニークはクマ対策に取り組んでいます。星野リゾートピッキオでは、民間のボランティアと共同で1998年から独自にクマの調査と被害対策に取り組んでいます。捕獲したクマに発信機付の首輪を付けて放獣し、その行動を追跡調査をしています(現在追跡しているツキノワグマは7頭)。ピッキオが設置した暗視自動ビデオカメラが撮影した、ゴミ箱からゴミ袋を盗んでいくツキノワグマの映像は、全国ネットのテレビニュースで放送されたので、御覧になった方も多いことでしょう。

 また、1999年に某別荘地に設置してあった軽井沢町所有の物置型ゴミ箱を、ボランティア団体の予算で中古コンテナに置き換えたところ、クマにゴミを荒らされることが無くなりました。そこで、クマ出没が問題になっていた町営のキャンプ場にも、中古コンテナを設置したところ、平成12年はクマの出没が見られなくなりました。ボランティア団体などは、野外に設置してあるゴミ箱を、中古コンテナに順次置き換えるように軽井沢町に対して働きかけています。なお、中古コンテナは改造費やペンキ塗り替え代を含めても約10万円の予算で済むそうです(市販されているスチール製物置よりも安い!)。また、軽井沢町役場ではツキノワグマとニホンザルの調査・被害対策を、平成12年から(株)星野リゾートに委託をしています。それに合わせて、(株)星野リゾート・ピッキオではツキノワグマの研究者とニホンザルの研究者をスタッフに加え、日夜調査活動を行っています。その他にも、軽井沢町ではゴミ収集管理体制を強化するなど、積極的なクマ被害防除対策に取り組んでいます。クマによるゴミ被害やクマの出没に頭を悩ませている自治体が、全国にたくさんあります。軽井沢町の取組を参考にされてはいかがでしょうか。なお、改造中古コンテナの写真を以下に紹介しますが、詳細は下記に直接お問い合わせください。

●問い合わせ先
軽井沢町役場農林課  長野県軽井沢町大字長倉2381-1
           TEL:0267-45-8572 FAX:0267-46-3165
星野リゾートピッキオ 長野県軽井沢町星野
           TEL:0267-46-666 FAX:0267-46-6666


 今後は軽井沢町のように、野生動物の調査や被害対策事業を、自治体が民間企業や民間団体(NGO, NPO)に業務委託するケースが増えるであろうと予測しています。なぜなら、野生動物の調査や被害対策には科学的な専門知識と、専門技術が必要だからです。既に北海道ではある民間団体が人とヒグマの軋轢が頻繁に発生している道南地区で、平成12年は道が研究用に捕獲したヒグマの追跡作業を業務委託で行っています。さらに、道(支庁)がいくつかの市町村で試験的に行っている電気牧柵普及事業でも、設置した電気牧柵のメンテナンスと点検をこの民間団体が代行しています。
 日本の行政組織(国・都道府県・市区町村)には、米国の「野生生物保護管理局」のようなセクションが欠如しています。行政の鳥獣担当者は3年から4年で交代するので、長期的取組が必要な野生鳥獣の調査や被害対策には適切とは言えません。担当者の交代によって、取組が進展したり後退したりする場合もあります。また、鳥獣被害対策を地元猟友会に頼る現行の方策には、狩猟者人口の減少・高齢化などで限界が見えています。また、野生鳥獣の被害対策を含めた野生動物保護管理事業には、狩猟技術以外にも野生鳥獣の生態などの様々な専門的知識や、最新の被害防除技術に関する知識・技術などが必要となり、従来の猟友会組織では十分に対応できない時期にも来ています。ただし、群馬県の
(社)桐生猟友会のように、組織内に野生動物保護管理委員会を新たに設置し、外部の野生動物の研究団体と交流を行いながら、猟友会が自ら科学的な野生動物保護管理事業に取り組むところも現れています。

 それでは、私と米国から来日したグリズリーベアの専門家が、ピッキオの南氏らに案内していただいた、軽井沢町でクマが出没している場所や、クマ対策の現場をご紹介しましょう。



  

  この看板、どこでも見かけるようになりましたねぇ。


  

  

  ここは某別荘地内に設置されている野外ゴミ箱です。クマがこのゴミ箱のふたを開けて、中のゴミ袋を加えて持ち去ります(テレビニュースで放送された現場です)。蓋に付けられている赤い袋には、住民が「クマ避け」のつもりで防虫剤(樟脳/ナフタリン)を入れていますが、これはクマ避けには全く効果はありません。


  

  ここは別の別荘地内に設置されている、クマ対策を施した野外ゴミ箱です。本体はコンクリート製で、蓋は丈夫なステンレス製です。蓋が開かないように夜間は近くの住民が施錠します。

  

  道路から見たところ。ここにゴミ箱があるなんて、誰も分かりませんよね。景観にも気を使い、さすが軽井沢だと感心しました。

  


  ステンレス製の蓋に取り付けられた、「クマ出没注意」のプレート。写真をクリックすると拡大します。



  

  これは軽井沢町が設置したスチール製の野外ゴミ収納庫です。ドアの取り付けが甘いので、クマの侵入を受けます。将来はクマ対策を施した中古コンテナへの交換が希望されています。



  

  軽井沢町営のキャンプ場の近くで見つけた、立派なクマ棚(くまだな)です。道路のすぐ脇にありました。



  

  キャンプ場に設置されたクマ対策の中古コンテナ。この中にキャンパーの食料が保管されます。



  

  

 星野リゾートに設置されたクマ対策の中古コンテナ。この中に分別されたゴミが収容されます。改造費・ペンキ塗り替え費を含めても約10万円で購入できたそうです。
町が購入したスチール製ゴミ箱よりも安上がりだということです。ゴミが取れないと分かると、クマはあきらめて来なくなります。クマ被害でお困りの自治体の皆さん、検討してみてはいかがでしょうか。




  

  

  星野リゾートの発電施設内に飾られていた、星野リゾート3代目会長・星野嘉助氏(創業者の名前が代々世襲されているそうです)の肖像とプレート。これを見たとき、私は震えるほどとても感動したことを忘れません。
『神より与えられた自然をこわすのは 神を冒涜することです。』ここまで言いきれる(もちろん実践している)企業人が、日本には何人いることでしょうか!?

  

  星野リゾートの水力発電設備。星野リゾートでは昭和4年より(当初は水車を利用)敷地内を流れる川を利用して水力発電を行っています。敷地内には発電設備が2基あります。

  
星野リゾートのURL. http://www.hoshinoresort.com



撮影年月日/平成12年11月29日
撮 影 地/長野県北佐久郡軽井沢町内
撮 影 者/藤村 正樹
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