九州クマ絶滅宣言に異議あり
2001年5月13日に大分県が事実上の「大分県のツキノワグマ絶滅宣言」をプレリリースしました。それに対して、九州のツキノワグマの撮影に精力的に取り組んでいる、野生動物写真家の栗原智昭(福岡県在住)さんが、九州クマ絶滅宣言に異議ありと、13日に緊急アピールを出しました。栗原さんから転載の許可を頂きましたので、以下にその緊急アピールを転載いたします。転載を希望される方、もしくは詳細についてのお問い合わせは、栗原智明さんご本人に直接お願いいたします。
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関係機関、報道各社ならびに関係者のみなさま
栗原@高千穂でクマ探し中です。
各地でヒグマ、ツキノワグマが連日の話題となっている昨今ですが、九州では別の意味で重大な発表がありました。
大分県がまとめている同県版レッドデータブックで九州産ツキノワグマが絶滅種指定となる予定であることが発表されました。(5月13日付の西日本新聞と宮崎日日新聞で確認しています)
宮崎県は昨年同様に絶滅種指定を行っていますので、全九州産ツキノワグマが絶滅したことを県レベルで宣言することを意味しています。
これに関し、以下に私見をまとめます。
両県とも、生存を示す科学的証拠がないことを理由に挙げておりますが、私の知る限り近年両県が積極的にクマに関する情報収集や現地調査を行った事実はありません。私は一生物学者・科学者の端くれとして、「疑問を解決するのは、更なる調査・研究のみ」と常々考えておりますが、今回十分な調査に基づいて結論が出されたのか、と言う点に強い疑念を感じます。
県のレベルで絶滅宣言をすることは、調査・保護対策・被害対策などの道を閉ざすことを意味し、特に下位の市町村レベルでは事実上不可能になります。レッドデータブックは自然科学的な文献である以上に、社会的は影響力を持った文献であり、その編纂に当たっては、その内容がどのような社会的影響を与えるかを配慮すべきでしょう。今回の絶滅宣言にはそのような配慮は全く感じられません。
また両県ともに多くの目撃証言があるにも関わらず絶滅宣言が出されるということは、これらの証言が全てウソ・偽り、または見間違いによるものであると断じるものであり、事前の聞き取り調査などなしにこのような判断が下されたとしたら、実名を公開して証言した方々に対する名誉毀損に当たる可能性すらあります。
私は九州産ツキノワグマは少数ながらもまだ生息している可能性が高いと考えています。根拠は極めて信憑性の高いいくつかの目撃証言、高千穂町で発見され写真などが保存されている足跡などです。捕獲個体、クマ本体の写真などの直接的物証が得られていないのは事実としても、本州での生息地でもこれらを確保するのが容易でない現状を考えれば、両県の絶滅種指定は時期尚早であり、RDBランクでは「現状不明」などとして調査を促すのが妥当であると考えます。
結果的に絶滅を食いとめ切れる個体数ではないとしても、九州産ツキノワグマの実態を正確に把握し、その事実を後世に伝えることは我々の責務でしょう。私一個人の力は微力ではありますが、九州産クマが本当の「幻」になってしまわぬよう、全力を尽くしたいと思います。
ではでは
平成13年5月13日
栗原智昭
(このメールは環境庁、報道関係者、自然保護関係者、野生生物研究者、野生動物関連のメーリングリスト、友人などにBCCで配信しています。重複がありましたらご容赦下さい)
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栗原智昭 <tomo.kurihara@nifty.ne.jp> 福岡県春日市
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