アイコンクマ知識 〜 熊についてもっと知ろう!

 クマの不思議な生態や、クマに関連した情報・知識をまとめてみました。まだ少ないのですが、徐々に増やしていく予定です。

轟音玉(2008年3月13日)
ブナの実の豊凶とクマの人里への出没の関係について(2006年3月21日)
仔グマの鳴き声について(2004年9月27日)
クマの着床遅延
剥皮被害
奥山放獣
ツキノワグマのアルビノ個体 (2001年5月3日)
日本のクマの推定生息数 : Population and Habitat(2001年6月9日)
クマの交尾期と交尾期の危険性 (2001年6月14日)
堅果類の豊凶と人身被害の関係 (2001年6月14日)
有害鳥獣駆除について考察1. (2001年6月14日)




轟音玉

「轟音玉」は株式会社小原商店が製造・販売している、動物駆逐用煙火(動物追い払い用の花火玉)です。

直径約4センチの球体が轟音玉の本体で、発音剤が9グラム入っています。本体に10センチの導火線が付いています。導火線の先にはピンク色の着火薬が塗布されています。
ただし、この導火線は燃えない構造で(火は導火線の中を通ので外から見えない)、着火後は煙も見えないので、
点火作業後にすぐ投げることが重要です。

轟音玉は点火後、約10秒後に爆発、轟音がなります。その爆発・轟音はかなり大きいので、主にトドやクマ、サルなど動物の駆逐(追い払い用)に使用されています。
ただし、導火線に着火しても火も煙も見えない構造が災いし、投げるタイミングを逸し、轟音玉が手の中で破裂、使用者が重傷を負う事故が各地で起きています。

過去には岩手県内でも、轟音玉を使用してクマの追い払い作業中の農家の主婦が、手の中で破裂させ指を失う事故が起きています。経済産業省の調べで、平成19年1月から平成20年2月にかけて、北海道、群馬県、サイパン島の会場において、4件(重傷者4名)の事故が起きていることが分かりました。平成20年3月6日、同省は日、火薬を扱う業界団体を通じて「轟音玉」の利用者に注意喚起しました。

なお、轟音玉は誰でも購入し、使用できるものではありません。現在、火薬類取締法で轟音玉の取り扱いができるのは煙火打上従事者のみと定められています。

詳しく説明すると、轟音玉を使用する際には煙火消費保安講習会を受講し、煙火保安消費手帳の交付を受けなければなりません。煙火保安消費手帳交付者でなければ、轟音玉の譲り受け・譲り渡しできないこととされています。すなわち、煙火打上従事者でなければ轟音玉を使用することはもちろん、買うことも人にあげることも人からもらうこともできません。

また、実際に轟音玉を使用する際には、煙火消費保安講習会の受講者もしくは、講習会の受講者の下でなければ使用することができないことになっています。講習会の日程や申込みに関しては、各都道府県の自然保護課か猟友会にお問い合せ下さい。

岩手県では、(社)日本煙火協会岩手県支部の指導の下、(社)岩手県猟友会が煙火消費保安講習会を行っています。



轟音玉の関連サイト
・株式会社小原商店 
http://www.obara-shop.com/hanabi/
・経済産業省 原子力安全・保安院・保安課 
http://www.meti.go.jp/press/20080306001/20080306001.html


ブナの実の豊凶とクマの人里への出没の関係について

 奥羽地域の1993年以降の調査で、ブナの実の豊凶とクマの人家周辺への出没には密接な相関がみられました。ブナの実が豊作の年は(クマの出没が減るので)クマの有害駆除数が少なく、ブナの実の凶作の年には(クマの出没が増えるので)有害駆除数は多い傾向がみられます。

 ブナは5年周期で豊作になる傾向がみられ、豊作の翌年は凶作になる習性があります。2005年の秋は、東北6県でブナが良作〜豊作でした。岩手県も奥羽地域で2005年はブナが豊作だったっことにより、2006年はブナが凶作になることが確実視されています。ブナが凶作になった場合、夏から秋にかけて多くのクマが食物を求めて人里や人家周辺に頻繁に出没すると予測され、さらに、栄養価の高いブナの実を昨秋たくさん摂取し、雌グマが栄養状態に恵まれ出産数が増加したとみられることから、春から行動を始める多数の親子連れのクマにも注意が必要になることから、岩手県は被害を未然に防止する狙いで「ツキノワグマの出没に関する注意報」を2006年3月20日に、県内全域に発表しました。被害が発生する前に注意報を出すのは、岩手県が全国で初めてになります。
 なお、秋田県もツキノワグマの出没注意報を発令する予定だと、マスコミは報じています。


関連するウェブページ
●岩手県自然保護課 http://www.pref.iwate.jp/~hp0316/
●岩手日報に掲載された記事 http://www.iwate-np.co.jp/news/y2006/m03/d21/NippoNews_5.html
●読売新聞(秋田県)の記事掲載 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060316i205.htm?from=main2

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仔グマの鳴き声について

 仔グマの鳴き声について寄せられた質問に対して、阿仁町ツキノワグマ研究所の小松武志さん(獣医学博士)さんより回答をいただきました。

『仔グマはいろんな時に泣きまして、そのときの状況によって様々です。鼻を鳴らす音「コフコフ」、不安で親を叫び呼ぶ「ギャーギャー」、親を呼ぶときの「オーウ」、ミルクをすうときの「ルルルル」、警戒時の「ウー」などなどです。』

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クマの着床遅延(ちゃくしょうちえん)

 クマの妊娠は、他の哺乳類と同じよう、オスとメスとが出会い交尾が行われることによって成立する。ただし、受精卵は胚の状態で子宮内で成長をほぼ休止し、越冬段階で母胎の栄養状態が良ければ子宮内膜に着床して成長するが、栄養状態が悪い場合には胚が流出(流産)する。このような現象を、胚が休眠し着床が遅れることから、胚の発育停止または着床遅延と呼び、クマ類やイタチ、アザラシ、カンガルーの仲間などに見られる現象です。

参考図書:「生かして防ぐクマの害」(米田一彦著、(社)農山漁村文化協会・発行)、「どうぶつの妊娠・出産・子育て」(和秀雄・編集、坪田敏男、他・共著、メディカ出版・発行)

 クマは単独生活をしているが、交尾期に限り雄雌がつがいになる。クマの交尾期は5月上旬〜8月上旬だが、交尾して受精してもすぐには妊娠しない。受精卵は胚の状態で発育をほぼ停止した数カ月を過ごす。越冬前の母胎の栄養状態が良ければ、12月頃に着床(胚が着床に接着し、胎盤の形成が始まる現象)し、冬眠中の2月頃に未熟児の状態で2〜3頭の子を産む。

 逆に越冬前に栄養状態が悪ければ流産する。

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剥皮被害(はくひひがい)

 クマによる造林被害で、日本と米国ワシントン州だけで確認されている特異な被害。日本では本州南西部と四国の山地での被害が甚大で、大きな社会問題となっている。東日本では青森県下北半島や山形県で被害が大きい。岩手県では数年前に一関市と住田町の2カ所で、それぞれ数ヘクタールのスギ造林地で被害が発生している。ただし、その後の被害報告はない。
 剥皮被害が発生するは主にヒノキ、スギ、ヒバなどの針葉樹。被害の状況は次の通り。クマが地際の樹皮にかぶりついてはがす。さらに樹皮をくわえて長く剥ぎ取る。樹皮下の柔らかい木質部が囓られ、木質部には歯形や爪痕が残される。幹の周囲の樹皮がはがされた樹木は枯死してしまう。また、傷つけられた木質部から雑菌が入り、木が腐れたり、傷が付いた部分が木の成長と共に中に巻き込まれる。結果的に木材としての価値が極端に下がり、林業家にとって経済的損失が大変大きい。また、畑作物と異なり、樹木を育てるには数十年という長い時間が必要である。その間の苦労がクマのために一瞬にして台無しになるので、経済的損害と合わせて林業家のクマに対する怒りはとても大きい。

原因・・・これまでに多くの研究者が研究・調査をしており、木の成長が著しく、樹液の生産が多い4月から7月にかけて被害が集中するので、甘みのある樹液をなめるためとか、木質部を食べる(岐阜大学ツキノワグマ研究会の報告では木の繊維がたくさん含まれた糞が見つかっている)、木質部に含まれる揮発性物質(モンテル類、とくにアルファ・ピネン)がクマを誘引する、広葉樹林の伐採や針葉樹の過造林・・・など、様々な原因が指摘されている。しかし、本当の原因はいまだ不明のまま。

対策・・・以前は有害鳥獣駆除一辺倒であったが(注1)、現在は様々な方策が考案(注2)され、効果を上げている。ただし、手間と予算がかかるので、効果が専門家によって確認されているにも関わらず、実施されている造林地がまだ少ない。

(注1)静岡県でツキノワグマの生息数が激減したは、剥皮被害対策のための有害鳥獣駆除で、クマを獲りすぎたのが原因だといわれている。また、四国のツキノワグマ個体群は絶滅確実レベルの10頭〜20頭だが、かつて高知県ではクマによる林業被害を防止するために、高額な報奨金を付けてクマの有害鳥獣駆除を行っている。現在四国では、クマの狩猟は禁止されている。

(注2)幹にビニールテープやゴムテープを巻き付ける。トタンを巻き付ける。剥皮被害が起きにくい森林施行の実施。地際に近い部分に忌避剤(ヤシマレントなど)を塗布する。

(注2)米国のワシントン州ではアメリカクロクマによる林業被害が発生している。その被害対策として、剥皮被害の発生する時期に限定してクマに給餌している。動物の死骸(ビーバーの死骸という情報あり)で給餌台にクマをおびき寄せる。給餌台には蜂蜜の成分が含まれた専用のペレット(クマの食べ物)が置いてあり、そのような給餌台が数百個(正確な数は押さえていません、スマン!)も造林地に設置されているそうだ。ワシントン州ではクマの給餌によってクマの林業被害は減少している。

参考資料/「森の動物100不思議」(日本林業技術協会)、「東アジアのクマとジャイアントパンダ、その生物学と現状」(クマ研究会会報特別号1号)

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奥山放獣(おくやまほうじゅう)

 移動放獣、捕獲お仕置き放獣、条件付け放獣、リロケーション(relocation)とも呼ばれる。クマによる被害を防止しつつ、クマを保護(殺さない)する方法として、西中国山地の数町村で約10年前から、米田一彦氏(日本ツキノワグマ研究所代表)の協力を得て実施された。具体的には罠(捕獲されたクマが怪我をしないように内部を処理されたドラム缶式の罠が通常使用されている)でクマを捕獲し、捕獲場所から離れた場所に移動後に、一旦麻酔で眠らせ、体調や体重などを調べる。そして、拮抗薬を用いて覚醒させ、クマが完全に覚醒した後に放獣する。ただし、放獣の直前に唐辛子成分の忌避スプレー(当社の
熊撃退スプレー「カウンターアソールト」が使用される)をクマに噴射し、人間に対する怖さや、里付近や畑などに出没すると人間に捕獲され痛い目にあってしまう・・・等を学習させる(条件付け、お仕置き)。その後の調査で、お仕置き放獣されたクマは捕獲場所周辺に戻らなくなるか、戻ってきても再被害が少ないことが専門家によって確認された。この方式は「広島方式」と呼ばれ、現在では北海道、岩手県(注1)、山梨県、長野県(注2)など全国各地で奥山放獣(移動放獣)が実施されている。

(注1)岩手県が平成10年度、11年度に行った奥山放獣と個体追跡調査では
捕獲場所から遠い場所に放した方が、近い場所に放すよりも捕獲場所周辺への回帰率は低い傾向があった。ただし、放獣しないで射殺(有害鳥獣駆除)した場合、数日後に別のクマが現地の畑に出没する例が多いとの観察例が、岩手県の第2回ツキノワグマ侵出防止技術検討会(平成12年3月23日)で出されている。

(注2)長野県では民間の研究団体・信州ツキノワグマ研究会が移動お仕置き放獣を、クマ被害地域の行政の協力を得て実施している。ただし、信州クマ研は独自の理論でお仕置き移動放獣を行っている。捕獲してお仕置きしたクマを奥山に移動してしまうと、別のクマがまたやってきて再被害を発生させる。そのクマを捕獲お仕置きして、再び奥山に放しても、さらに別のクマが再被害を出すので意味がない。そこで、お仕置きしたクマ(人間の怖ろしさを学習したクマ)を捕獲地周辺で放獣すれば、他のクマの進入を防げるし、そのクマは再被害を出さなくなるので、クマがいても被害が起こらない環境ができる・・・。この考えが正しいかはさらに年月をかけて調査をしなければ分からないので、まだ結論は出ていません。

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ツキノワグマのアルビノ個体

『岩手県内で発見されたツキノワグマのアルビノ個体』(2001年5月3日)

 ツキノワグマのアルビノ個体は珍しいといわれている割には、岩手県内ではたくさんの白いクマが見つかっている。なぜだろうか?発見場所がすべて北上山地である。岩手県には北上山地と奥羽山系に2つのクマの個体群が生息していると、最近の調査で分かってきた。特に北上山地のツキノワグマ個体群は孤立していると専門家はみているので、遺伝的劣化も進んでいると考えられる。北上山地のツキノワグマから、アルビノ個体が多く現れていることに関連があるのだろうか。


『岩手の白いクマが遺伝子調査』(2001年5月9日)

岩手県では今回目撃された個体を含め、アルビノ個体と見られる「白いクマ」が6例確認されているそうです。
初めて専門機関による調査が始まるというニュースが、地元紙に掲載されたので紹介します。


『岩手の白いクマが遺伝子調査』
平成13年5月10日付岩手日報・朝刊より

 5月10日付岩手日報・朝刊によると、『岩手県内の北上山地では過去約40年間で6例も白いクマが確認され、非常に頻度が高い。これらのツキノワグマは、色素を作ることができない遺伝子を両親から受け継いだアルビノ固体(白子体)と考えられる。同じ岩手県内でも奥羽山系では白いクマは確認されておらず、全国的にもほとんど例がない。岩手県内のツキノワグマの推定生息数は約1,000頭にすぎないので、北上山地でのアルビノ固体の頻度は非常に高い。盛岡市厨川の独立行政法人森林総合研究所東北支所は、「生息地が分断されている」、「奥羽山地など他のクマとの交流が無くなった」等によって、近親交配の可能性があると推測、遺伝子調査を始めることになった。県内各地で保存されている「白いクマ」の剥製の体毛や頭骨などからデオキシリボ核酸(DNA)を抽出し、アルビノ個体の確認、近親交配の有無などを分析する予定。』


アルビノ個体と見られる「白いクマ」の事例

2001年4月30日  
盛岡市簗川の山林で、3~5才くらいと見られるツキノワグマが住民や山菜採りに来た人などに目撃されている。さらに、地元のテレビ局・テレビ岩手が白いクマの撮影に成功した。野生の状態でのアルビノ個体がテレビカメラに撮影されることはとても珍しい。(2001年5月1日岩手日報、2001年5月 2日朝日新聞、2001年5月2日 テレビ岩手「NNNニュースプラス1いわて」)

2000年6月25日 
盛岡市川目の国道106号落合トンネル付近で、白いクマが車で通りかかったドライバーに目撃され、写真に撮影されている。(2000年6月27日 岩手日報)

2000年?月?日 
川井村の山中にて白いクマが目撃され、写真に撮影されている。(私信)

1991年11月21日 
住田町世田米の通称「朴木山(ほおのきやま)」の麓に黒い仔グマを2頭連れた白いツキノワグマが出没した。町の中心部から北西に2.4キロ入った柿内沢の奥で、地元の住田獣猟クラブのハンターによって白いツキノワグマは駆除された。そのツキノワグマのアルビノ個体の剥製が、1992年2月に岩手県立博物館で展示された。体長1.2m、体重70キロほど、雌の成獣、推定年齢は5~6才。(1992年2月7日 岩手日報)
 私もその剥製を見たが、剥製の作りが悪いためか、黒い色素が欠落して鼻も白かったからか、クマというよりも、豚みたいな剥製だったと記憶している。現在は展示されていないが、その剥製は県立博物館で保管されているそうだ。


その他の情報(1992年2月7日 岩手日報の新聞記事より)

住田町では1985年〜1996年頃、1991年にアルビノ個体が出没した付近で白いクマが目撃されている。
住田町では10年ほど前にも白いクマが射止められ、住田町農林会館にその剥製が展示されている。
遠野市青笹町でも約10年前に白いクマが見つかり、捕殺された剥製が遠野市市民センターホールに展示されている。
・日本クマ研究会代表の朝日稔(兵庫医大教授・当時)博士は新聞の取材に対して、ツキノワグマのアルビノ個体は新潟、福島県境で見つかっているが、極めて珍しいとコメントしている。

※盛岡市簗川・川目、住田町、遠野市、川井村は北上山地に属している。


マタギの伝承と白いクマ

『ブナ帯文化』(思索社)には、第7章で石川純一郎氏が「マタギの世界〜ブナの森の狩人達」を執筆している。その中で各地のマタギの文化や技術・伝承などについて書いているが、白いクマについての記述は見つからなかった。


海外での白いクマ(アルビノ個体)

・アルビノ個体と見られる白いアメリカクロクマの写真を公開しているサイト
 
http://members.nbci.com/Luv2Wander/NWT99/SpiritBear.htm

・カナダのブリティッシュコロンビア州にある島に生息している、白いアメリカクロクマを紹介しているサイト
 
http://www.island.net/~lbhheli/pictures.html

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日本のクマの推定生息数(生息地): Population and Habitat

 クマの研究者や専門家が一般的に使用している推定生息数です。九州のツキノワグマについては、宮崎県や大分県で絶滅宣言が出されていますが、祖母傾山山系などでの生息の可能性もあり、民間での調査が行われています。

アイコンツキノワグマ(本州・四国):10,000〜15,000頭
   The Population of Japanese Black Bear is about 10,000~15,000.
   The habitat is Honsyuu island and Shikoku island.

アイコンヒグマ(北海道):2,000〜3,000頭
   The population of Hokkaido Brown Bear is about 2,000~3,000.
   The habitat is Hokkaido island.

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クマの交尾期と交尾期の危険性

 ツキノワグマの交尾期は通常6月ー7月です。クマは特定のカップルは作らず、雄グマは複数の雌グマと交尾します。交尾期間は雄グマも雌グマも緊張状態が続いているので、この期間中にクマと遭遇した場合、事故につながる危険性が高くなります。特に子グマを連れた母グマは、雄グマから子供を守る必要があるので、非常に警戒心が強く、攻撃的になっています。なぜならば、雄グマは子グマを殺して、雌グマと交尾をしようとするからです。クマの子殺しは、自分の遺伝子を残すための本能だともいわれています。また、強い(優位な)雄グマは自分よりも弱い雄グマを排除して、雌グマと交尾したりもします。

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堅果類の豊凶と人身被害の関係

 前年の秋に堅果類(クリ、ミズナラ、コナラ、ブナ等)が豊作だと、クマの特異な生理である
着床遅延の関係で、クマの妊娠率及び出産率が高まる(出産は翌年の2月頃)。すると、翌年の春は子連れのクマが増えることになる。正確な統計資料はないが、クマによる人身被害の大部分は子連れの親グマが、子グマを守るために攻撃したと考えられる。よって、堅果類が豊作だった翌年は、人身被害が増える可能性が高いので注意が必要になる。
 逆に前年の秋に堅果類が不作だと、クマの里への出没が増加し、農作物被害も例年より増える。クマは冬眠に備えて8月以降荒喰いの時期にはいるといわれている。冬眠中に生き残るため、冬眠中に出産・授乳するためには、大量の脂肪と栄養を体内に蓄えることが必要だからである。よって、堅果類の不作の年は、クマの出没と被害が増え、有害鳥獣駆除で捕殺されるクマも増加する。過去例からも、凶作の年は「異常出没」になる可能性がとても高いので、特に警戒が必要である。

 秋田県阿仁町のマタギから聞いた話だが、豊作の年はクマが冬眠する時期は遅い。不作の年は逆に早く冬眠する。

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有害鳥獣駆除について考察1.

 有害鳥獣駆除も被害防除法の大切なオプションではありますが、駆除の許可が安易に出されていることに問題があります。許可権限を都道府県知事が保持しているところはまだ一定の歯止めが利きますが、市町村長が有害鳥獣駆除の許可権限も握っている自治体では、住民重視の観点から、申請があればすぐに許可がおります。岩手県のように、有害鳥獣駆除に一定の基準(ルール)を設ければ、安易な駆除には歯止めがかかるので望ましいと言えます。

 北米ではWildlife Fish and Parks(野生動物保護管理局)といったような、野生鳥獣や魚類の保護管理・被害対策・調査研究等を行う行政機関がきちんと整備されています。そして、人を襲ったり死亡させたクマは、現場で採集した毛や糞などから、DNAを調べて加害グマを科学的に特定し、必要だと野生動物保護管理局のクマの専門家が判断した場合には、野生動物保護管理局の専門家や、狩猟官といった行政の職員がクマを捕殺(コントロール・キル)します。

 日本にはこのような行政の組織・機関が整備されていません。また、そのような専門的知識や技能を持った人材も、行政組織の中にはほとんどおりません。多くの場合、野生動物保護管理の専門知識が備わっていない一般職員が、駆除の判断を下し、趣味で狩猟を行っている民間のハンターに有害鳥獣駆除を委託しています(報奨金を支払っている場合もある)。そして、科学的な裏付けのないまま、すなわち、捕獲したクマが実際に被害を及ぼしたクマか、それとも無実のクマであるかを確かめないまま、捕殺しています。
 野生動物の保護管理という分野では、日本は欧米はもとより、南米や東南アジア、アフリカ諸国と比べても立ち後れていると思います。
 国や地方自治体に野生動物保護管理を責任を持って行う行政組織・機関が整備されていない。そして、野生動物保護管理の専門的知識と技能を持った人材がおらず、人材育成も怠っている。日本の大学には野生動物保護管理や国立公園の管理などを、学生に教える能力が不足しているそうです。すなわち、それらの専門的知識を持ち、学生を指導できる教官が大変少ないし、学部学科も北米に比べて極端に乏しいといわれています。

 有害鳥獣駆除は野生鳥獣を殺すことが目的ではありません。被害を防ぐ、被害を減らすことが本来の目的であるはずです。しかし、昭和53年から平成4年までの15年間に、38,836頭のツキノワグマとヒグマが狩猟と有害駆除によって捕獲されています。この内、有害鳥獣駆除(春熊の予殺駆除を含む)による捕獲数は20,794頭で、全体の約54%を占めています。それほどまでにクマを捕殺してきたにもかかわらず、クマによる被害は一向に減らず、逆に被害は増え、人とクマとの軋轢は益々深刻化、社会問題化しています。明らかに、国や地方自治体の政策に誤りがあったと言えるのではないでしょうか。

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