パワーフェンシングシステム/簡易電気柵の説明

有限会社アウトバック
野生動物対策係

1)家畜用の電気柵と、野生動物対策用の電気柵の違い
2)パワーフェンシングシステムとは・・・
3)漏電対策について
4)リボンワイヤーの使用
5)条件に応じたシステム設計、設置・移動・撤収が簡単
6)耐用年数について
7)電源について 
8)実績について
9)安全性
10)メンテナンスについて


1)家畜用の電気牧柵と、野生動物対策用の電気柵の違い

 馬、牛、羊などの家畜を囲い込むために、日本でも昔から電気柵は使われてきました。放飼場の周囲に杭を打ち込み、数段のワーヤーを杭に張り巡らし、それに電気を流すという簡単なシステムです。家畜を外に逃げ出さないようにすればよいので、システムも簡単で、漏電対策も充分ではありませんでした。

 クマや鹿、イノシシ、ニホンザルなどの野生動物が、畑や果樹園、養蜂場に出没し、被害が問題になった初期の頃は、そのような家畜用の電気柵が流用され、ことごとく失敗しました。
 理由は明白です。畑や果樹園、養蜂箱、ゴミ捨て場、植林地に美味しい食べ物がたくさんあることを知った野生動物は、危険を承知であらゆる戦略を駆使して、それを食べるために必死になるからです。すなわち、野生動物の侵入を阻止するためには、それ相応の工夫が施された電気柵でなくてはなりません。

  野生動物の被害を防ぐには、野生動物被害防除用の電気柵(システム)でなくてはなりません。しかも、野生動物被害防除に実績のある電気柵であることと、対象となる野生動物の生態や防除法の知識を持っているメーカーであることが肝心です。価格が安いからといって、実績のない、漏電にも弱い家畜用の電気柵を設置して、クマや鹿に畑を荒らされることは避けてほしいものです。


【ポイント1】

1.家畜用の電気柵と、野生動物対策用の電気柵は異なる。

2.対象となる野生動物被害防除に実績のある電気柵を選ぶ。

3.対象となる野生動物の生態や、被害防除法に詳しいメーカーを選ぶ。



2)パワーフェンシングシステムとは・・・

 パワーフェンシングシステムとは、世界で初めて電気柵を作った、ニュージーランドのガラガー社の画期的な電気柵システムのことです。最も大きな特徴は、パワーユニットの使用です。
 野生動物から畑や果樹園、養蜂場などへの被害を防ぐには、それ相応のパワー出力(B160の場合、通常5,000〜8,000ボルト)と、さらに野生動物対策のノウハウが必要です。

 パワーフェンシングシステムで使用している、ニュージーランドのガラガー社のパワーユニットは、100ヵ国以上で使用されている優れた製品です。たくさんの毛で覆われている羊には、普通の電気柵は効果がありませんでした。ところが、ガラガー社はパワーユニットによってそれを克服しました。羊といえども高電圧の電気ショック(パルス電撃)を受けます。

 熊被害防除用に最も利用されているパワーユニットB160型の場合、1台でワイヤーの総延長が1Km(4ha)までの畑や果樹園をカバーすることが可能です(メーカーのデータ)。約1秒間に1回の間隔で5,000〜8,000ボルトの高圧電流がワイヤーに流れます。電流は70〜120mAです。

 上位機種のB600型(10,000Vの電撃が可能/200〜230mA)は、B160型の約4倍のパワーがあり、アフリカでは畑を荒らすアフリカゾウ対策として使用されています。また、延長100m(10F)までの小面積の畑や養蜂場等なら、B11型(単1アルカリ乾電池6本で約2ヵ月稼働する、世界最小のパワーユニット/5,000〜8,000V)が利用できます。パワーユニットは強化プラスチック製絶縁体ボディーで作られているので、屋内、屋外のいずれでも設置が可能です。

【ポイント2】

1.世界100カ国で実績のあるパワーユニットを使用している。

2.パワーユニットは高圧電流を、約1秒間に1回の間隔でワイヤーに流すので電力消費が少ない。



3)漏電対策について

 今まで一般に使用されていた電気柵は漏電しやすく、野生動物の被害防除用としては効果は不十分でした。つまり、碍子やポール等から漏電するし、さらに、下草やつる草等がワイヤーと接触して漏電する(電圧が下がる、電気の消耗が激しい)わけです。降雨時はさらに漏電し、ワイヤーを手でさわっても、電気を感じないような電気柵さえ売られています。

 パワーフェンシングシステムは、専用のグラスファイポールを使用すれば、碍子は必用ありません(注:木の杭には専用の碍子を使用する)。また、グラスファイポールとパーマネントポスト、マルチポールは絶縁体なので、そこから漏電することはほとんどありません。もちろん、雨が降っても十分な効果があります。
 さらに、植物等がワイヤーに接触しても、(植物の種類によるが)ほとんど心配ありません。なぜなら、ワイヤーに触れた草を、パワーユニットによる高圧電流(通常5,000〜8,000ボルト)が枯らしてしまうからです。ただし、木の枝や水分の多い植物(蕗やイタドリなど)がたくさん接触した場合は、多少漏電のリスクが生じます。
 万一漏電しても、パワーユニットは供給する電圧を高め、常に一定の電圧を維持する電圧調整機能があるので安心です。ただし、漏電の原因を取り除かないと、いつまでも電気を無駄に消費することになります。パワーフェンシングシステムの効果を十分得るためには、定期的(1日1回)にワイヤーに流れる電圧をチェックするなどの、メンテナンスは必用です。
 ワイヤーの下にマルチを敷いたり(雑草の生育を妨げる)、電気柵の周囲にトタン板や鉄板を敷く(地面が乾燥した時に通電性を高める)等の工夫をすれば、メンテナンスが楽(除草の手間が省ける)になるし、より効果があります。


【ポイント3】

1.漏電は電気柵の敵。

2.パワーユニットは電圧調整機能付なので漏電に強い。

3.定期的(1日1回)にワイヤーに流れる電圧をチェックするのが効果を上げるコツ。



4)リボンワイヤーの使用

 ワイヤーはリボンワイヤーとホワイトワイヤーの2種類が使用できます。ただし、野生動物被害防除には普通リボンワイヤーが使われます。ホワイトワイヤーの方が電気抵抗は少なく、風による影響も少ないのですが、接地面積の広いリボンワイヤーの方が電撃ショックが大きく、動物に対してより効果があるからです。また、幅約10mmの白い帯状のリボンワイヤーは視認性が高く、遠くからよく見えます。

 パワーフェンシングシステムは物理的柵ではなく「心理柵」の効果を狙っているので、なるべく目立ったほうが相乗効果が高くなります。


【ポイント4】

1.リボンワイヤーを使用すれば、物理的にも心理的にも効果が高くなる。



5)条件に応じたシステム設計、設置・移動・撤収が簡単

 パワーフェンシングシステムは、対象動物と被害のレベル、設置する地形や面積、予算等の条件に応じて、システムを組むことが可能です。また、後から付け足すことも可能です。

 例えば・・・
・傾斜地や、畑の中を沢や用水路があっても、設置が可能。
・れた2ヶ所の畑を1台のパワーユニットでカバーすることも(条件に応じて)可能
・被害レベルの応じてシステムを組んだり、設置した後に資材を付け加え、レベルアップすることも可能。
・動物が地面を掘って、ワイヤーの下から電気柵柵の中に侵入しても、外柵(トリップフェンス)を設置するなど対処が可能。
・ポールの長さを長くしたり、ワイヤーの段数を増やせば、クマ&カモシカ、クマ&シカ被害防除用のシステムが組める。
・予算が少ない場合には、専用のグラファイポールを使わずに、設置者が用意した角材な どの杭に、専用の碍子を付けたもので代用し、コストを下げることも可能。

 ただし、専用のグラファイポールを利用すれば、フェンスの設置と撤収がとても簡単です。電気柵を移動しながら利用する方や、養蜂家の方には最適なシステムになります。システムや延長距離にもよりますが、小面積の畑や養蜂用のシステムであれば、慣れれば1時間くらいで作業が終わります。

 ※猿害対策用の電柵は、クマ害対策やシカ害対策用の電柵と比較して、高度なシステムが要求され、費用もたくさん必用になります。


【ポイント5】

1.地形や対象動物、被害レベル、予算などの条件に応じてシステムを設計、設置できる。

2.専用の資材を利用すれば、設置・移動・撤収が簡単。



6)耐用年数について(通常の使用の場合)

 パーマネントポストの耐用年数が30年以上、グラファイポールが約10年、リボンワイーヤーとホワイトワイヤーが約3年で、とても経済的です。グラファイポールやリボンワイーヤー、ホワイトワイヤー、クリップなどの消耗品を、あとで買い足しすることもできます。パワーユニットには1年間のメーカー保証が付き、さらに、家電製品並の耐用年数があります。

 ただし、電気柵を使用しない期間(冬期など)は、ワイヤーをはずして屋内で保管してください。紫外線や風雨による劣化や、付着した雪の重みによる断線を防ぎ、耐用年数が伸びます。


【ポイント6】

・消耗品以外は耐用年数が長い。

・パワーユニットには1年間のメーカー保証が付く

・メンテナンスをきちんとすれば、耐用年数がさらに伸びる。

・消耗品を交換すれば、パワーフェンシングシステムは長く使用できる。



7)電源について 

 電源は・・・4種類が使えます。

1.家庭用100V電源(機種によっては別売りのACアダプターが必要)
2.自動車用バッテリー(12V80A以上)
3.ソーラー発電システムとバッテリーの組み合わせ。(充電の手間がいらない)
4.単1アルカリ乾電池(B11のみ)

 使用するバッテリーは、12V80A以上のものを使用してください。パワーフェンシングシステムの機能を維持するには、定期的(1日1回)にバッテリーの電圧測定を実施し、電圧が下がったら充電してください。新しいバッテリーを使用する場合は、(延長距離にもよるが)約1ヵ月以上使用できたという報告もあります。ただし、メーカーでは1週間〜2週間ごとにバッテリーを充電することを推奨しています。

 尚、電圧を測定するために別売りのデジタルボルトメーターかネオンテスターを、できればご用意ください。B160のパワーユニットは、工場出荷時点で9,000ボルトに設定されていますが、システム設置後は電気抵抗のため8,000ボルト(スイッチを「高」にした場合)〜5,000ボルト(スイッチを「低」にした場合)に下がります。5,000ボルト以上の電気が流れていれば正常に機能しています。デジタルボルトメーターやネオンテスターがあれば、正常に機能しているかどうかを見て確認できます。また、漏電の有無やバッテリーの交換時期も、電気柵の設置管理者が自分で簡単に点検できます。


【ポイント7】

1.機種や使用環境、予算に応じて4種類の電源が使用可能。



8)実績について

 このパワーフェンシングシステムは100ヵ国以上で、様々な野性動物(アフリカゾウ、キリン、グリズリーベア、シロクマ、アメリカン・ブラックベア、シカ、ヘラジカ、カンガルー、水牛、バイソン、野豚など)の被害防除に利用され、その効果が高く評価されています。日本でもエゾジカ、ホンシュウジカ、ヒグマ、ツキノワ、ニホンザル、イノシシ、タヌキ、キツネなどの被害防除に、多くの実績があります。

 アメリカ合衆国モンタナ州政府の野生動物、魚類&公園局では、クマ対策として養蜂業者や酪農家に、このパワーフェンシングシステムの利用を奨励しています。

 日本でも特にエゾジカ対策用として既に高い実績があり、北海道では北海道農政部自ら普及に勤めています。北海道では平成2年3月より、農業改良資金適用の対象商品になりました。また、岩手県では平成3年度の県の事業として、五葉山山麓地域のホンシュウジカ被害防止の実験に使用され、その効果が確認されています。

 さらに、岩手県遠野市では、1994年8月に当社からパワーフェンシングシステムを10基を試験的に導入し、市内の被害農家(デントコーンとリンゴ)に無料で設置したところ、被害をほぼ完全に食い止めることに成功しました。そのデータを元に、東北地方で初めてクマ被害防除を対象とした『電気柵補助制度』を1994年10月から施行しています。その後遠野市では、パワーフェンシングシステムを含めた各種電気柵が広く普及し、ツキノワグマによる農業被害を大幅に減らすことに成功しました。
 また、長野県のある山小屋では、残飯置き場に多数のツキノワが居着いてしまい、大変困っておりました。そこで信州ツキノワグマ研究会がボランティアで、残飯置き場の周囲にパワーフェンシングシステムを設置したところ、クマを追い払うことに成功しました。クマがリボンワイヤーにさわった途端、電撃ショックに驚いて逃げていく様子が、NHK総合テレビの朝のニュース番組で放送されました。

 このように日本でもパワーフェンシングシステムは、野生動物による農業被害、果樹被害、酪農被害、養蜂被害、造林被害の防除や、へい獣処理場、養魚場、ゴミ捨て場、山小屋等へのクマの侵入防止などに、着実に実績を延ばしています。


【ポイント8】

1.日本を含めた100ヵ国以上の国々で、様々な野生動物被害防除で優れた実績がある。

2.海外や国内で得られたノウハウを利用できる。



9)安全性について

 一般家庭用の100V電源には、30Aもの電流が流れています。しかし、パワーフェンシングシステムには極わずかの電流しか流れていません(電流は機種によって異なる)。

機種/電流
B160/70~120mA
B260/100~230mA
B600/200~500mA
B1200/0.5~1A

 リボンワイーヤーの視認性が高いのも、誤って触れる危険性を少なくしています。さらに、150ヵ国以上で使用され、事故の報告例がないということは、安全性の高さの証明になります。ニュージーランドのガラガー社では、各国のPL法にも十分対処できる万全の対策がとられています。ガラガー社のパワーフェンシングシステムは、「おそらく世界で最も安全な電気柵」と表現しても、過言ではありません。

 とはいえ、触れると大人が尻餅をつくほどの電撃ショックがあります。注意標示版を下げたり、看板をたてて注意を呼びかけるなどの配慮は必要です。特に子供やお年寄りが電気柵に触れないように、電気柵の設置管理者は責任を持って注意をしてください。


【ポイント9】

1.ワイヤーに流れる電圧は高くても、電流は小さいので安全。

2.150ヵ国以上で使用されているが、事故の報告例がない。

3.メーカーでは安全対策を十分施してある。

4.注意標示版を下げたり、看板をたてて注意を呼びかけるなどの配慮は必要である。



10)メンテナンスについて

1.ワイヤーはイージーウェイ緊張具を使って緊張させる。緩いと他のワイヤーと接触し、故障の原因になる。また、動物が侵入しやすくなる。
2.定期的(1日1回)に電圧を測定する(5,000ボルト以上であれば正常)。
3.電源の入れ忘れは厳禁。
4.電圧が下がったら、漏電箇所を調べる。ワイヤーに草や木がさわってないか、落下物がないか、木が倒れていないか。(強風の後は特に注意する)
5.電気柵の周囲に動物の足跡がないかを、定期的に調べる。
6.もしも、柵の中に侵入されたら、何処から侵入されたか経路を調べる。a.地面を掘ってワイヤーの下からの侵入と、b.電気柵に接している立木を伝って侵入するケースが多い。希に、c.電気柵の設置が悪かったり、ワイヤーが緩んでいて侵入されることもある。

a. 本柵より30cm外側に、地上から15cmの高さに、1段張りの外柵(トリップフェンス)を設置する。
b. 原因となる立木を伐採するか、立木を柵の中に囲う。
c. 電気柵を正しく設置する。ワイヤーはイージーウェイ緊張具を使って緊張させる。

7.使用しないときはワイヤーを撤収する。


【ポイント10】

1.正しく設置し、きちんとメンテナンスをすればするほど、電気柵は効果を発揮する。

2.設置管理者が責任を持って、自分の財産(電気柵)を管理することが最も大切。

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