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アイコン知床半島のヒグマと安全対策
アイコン威嚇弾によるクマの追い払い法
アイコンヒグマ情報(出没、事件など)

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知床半島のヒグマと安全対策について

 北海道大学ヒグマ研究グループのOBで、地元の猟友会員でもある斜里町役場自然保護課の山中正実氏(ヒグマ研究員)から、最新の「知床半島のヒグマと安全対策」の資料が届きました。知床に行く予定の方はぜひ参考にしてください。また、斜里町には斜里町知床自然センターがあるので、最新のクマ出没情報は直接お問い合せください。

 特に、最近はマナーの悪い旅行者(空き缶・ゴミの投げ捨て、生ゴミを持ち帰らない)が増え、それがヒグマを誘因する原因となっています。地元では大変迷惑をしていますので、皆さんはゴミを必ず持ち帰りましょう。

 尚、この内容についてのお問い合せ先は最期に記載しています。

 

                       平成10年8月5日

 



 「知床半島のヒグマと安全対策」

 

平成10年(1998年)8月 斜里町自然保護係・知床自然センター管理事務所

1. ヒグマってどんな動物?

 日本には、本州のツキノワグマと北海道のヒグマの2種類が生息しています。ヒグマはツキノワグマよりも肩が大きくもりあがっており、爪は大きく長いのが特徴です。体格もヒグマの方が大きく、体長2メートル以上、体重も300Kgにもなるものもいます。ツキノワグマグマはオスでも平均70kgほどです。いわゆる「月の輪」はヒグマにもしばしばみられ、両者を判別する目安にはなりません。ヒグマは北海道だけでなく、ロシアや北米など北半球に広く分布しています。

  写真 ヒグマの頭骨

 ヒグマの四季

春 

 4月、春の知床にはまだ雪がたくさん残っています。この時期、クマは冬眠穴から姿を現わし、芽吹いてきた草や、前年の秋のどんぐりや海岸にうちあげられたカニや海獣の死体を求めて歩き回り、雪上には足跡を残します。冬眠中に出産した母グマは、仔グマをつれて出てきます。仔の数は普通1〜3頭です。

この時期になるとクマの餌となるフキなどの草本が豊富になり、山を歩くとこの食痕がみられるようになります。クマの食物は、1年を通して草本や果物などの植物が約88%も占め、動物質の食物はわずかで、しかも、ほとんどがアリやハチなどの昆虫です。

暑い夏が終ると、いろいろな木の実が食べごろになります。クマはどんぐりやサルナシの実を好み、木に登って食べることもあります。

まるまると太ったクマは、12月ごろ再び冬眠にはいります。クマの冬眠穴は、自分で地面を掘って作ることが多いのです。寝床にはササや小枝が敷かれ、メスグマの穴の中では、やがて新しい生命が誕生します。

  写真    生後1日目のヒグマの赤ちゃん

 2. ヒグマとの共存のために

 
知床は全域がヒグマの生息地です

 知床は高密度生息地です。クマはどこでもいると思ってまちがいありません。クマは人を避けて山の中で静かに暮らす動物ですが、対応を誤ると危険な場合もあります。野生の王国のルールを守れば、ほとんどの問題を避けることができます。


 ●出会わないようにすること、引き寄せないことが、最も大切!


 自分の存在を知らせてやって下さい!

人の接近に気付くと普通はクマの方で避けてくれますが、気付かぬまま至近距離で出会うと危険です。自分の存在を知らせてやって下さい。鈴や笛で物音を立てながら歩くと、ほとんどの遭遇を避けることができます。クマは嗅覚や聴覚に頼って生活しています。風が強いときや、風上に向かって歩く時、水音が騒々しい沢沿いでは、クマはあなたに気付かない恐れがあり、特に注意が必要です。

 危険なクマを作らない!

 人間の食物の味をしめたクマは、人によって来るようになり、たいへん危険です。ゴミを捨てたり埋めたりするのは絶対にやめて下さい。あなたの後からそこに訪れる人たちまで、危険に陥れることになります。今はやりのコンポストによる生ゴミ処理は、山林に隣接する地区では、クマを引き寄せてしまいます。


 犬を連れ歩くのはやめましょう!

 人に気付いたクマは、すぐそばに潜んでやり過ごそうとすることがよくあります。そんな時、敏感にクマに気付いた犬が吠えかかると、クマを興奮させ無用の危険を招きます

特に犬を放して歩くのは危険です。


 ●クマに出会ったら!?

 まず冷静に!

 落ち着いてクマを驚かせないこと。ほとんどの場合、クマの方で逃げていきます。遠くに見えたら、そのまま静かに離れましょう。

 近づかないで!

 特に仔グマに近付くのは自殺行為です。近くに必ず母グマがいます。車からクマを見ても、決して降りてはなりません。

 車から降りないで!

 車で走行中にクマを見ても、決して車から降りてはなりません。

 騒がない!走らない!

 興奮して追いかけてくる可能性があります。クマはあなたよりもはるかに早く走れます。立ち上がって鼻をヒクヒクさせて周りを見回していたら、あなたが何者かを確認しようとしているのです。両手を上げて大きくゆっくり振って静かに話しかけ、人がいることを知らせてやって下さい。

 絶対に!餌を与えてはいけません!!

 人を付け回したり、人家を襲うような極めて危険なヒグマを作り出してしまいます。絶対にやめて下さい。


 ●もし、近付いてきたら!?

 それでも、騒がない!走らない。

 かえって興奮させる可能性があります。相手の動きをよく見ながら、ゆっくり後退しましょう。気付かずに近づいているのかもしれません。落ち着いて声をかけてやりましょう。


 クマが手を付けたものを、取り返そうとするのは危険です!


 クマスプレーを持っていたら!

 最近、アメリカで開発されたクマ撃退用のスプレーが、登山用品店などで入手できます。もし持っていたら、発射可能な状態に用意しましょう。有効射程は4〜5mです。有効射程内に入り、さらに接近してくる時だけ使いましょう。攻撃的な行動を90%以上の確率で停止できるとされています。しかし、100%ではありません。あくまで最後の手段として用いるべきです。クマの顔をねらって一気に全量を噴射させます。


 ●万が一、襲われたら!!

 威嚇行動に注意!

 突進と後退を繰り返して威嚇するだけのことがよくあります。ここで大騒ぎすると本当の攻撃を誘発します。


 本当に襲われたら!

 確実な対処法はありませんが、アメリカでの研究では抵抗してさらに激しい攻撃を招くよりは、じっと抵抗しない方がはるかに助かる確率が高いとされています。ほとんどの攻撃行動は防衛的なもので、短時間で立ち去るからです。体を丸めて地面に伏せ、両手を首の後ろで組んで顔面やのどや腹部を守りましょう。リュックを背負っていたら、背中を守るプロテクターになります。


 ●安全なキャンプを!!

 場所選びは慎重に!

 キャンプ場や指定地以外でキャンプするのはやめましょう。クマを見たり新しい足跡や糞などがある場所は避けましょう。


 食事の匂いに要注意!

 テント内に食料を保管したりテント内で調理や食事をするのは厳禁です。テントにクマを引き寄せてしまいます。テントから十分に離れた場所(100m位)で調理し、ゴミや食べ残しを放置しないこと。食料やゴミ、鍋や食器はビニール袋などで密閉して匂いがもれないようにし、車のトランクに入れるか、あるいはリュックに入れてテントから充分離れた高い木に吊しておくのが安全です。

 食料の吊し方(S.Herro Bear Attacks p134より)

 登山道のキャンプでは!

 高い木がない高山帯のキャンプでは、木に吊すこともできません。アメリカでクマ対策用に開発された携帯用コンテナ(ベアーレジスタントコンテナ、注参照)が利用できます。まず、食料やゴミなどクマを誘引するものをビニールでパックして匂いが漏れにくいようにしてコンテナに詰めます。寝るときには、テントから十分に離して地面においておきます。食料目当てにクマがテントに来ることを防ぐことができます。

 (注)ベアーレジスタントコンテナ:円筒型の強化プラスチックで、クマに破壊されないことが保証済み。アタックザックなどに詰めることができるサイズ。クマが多く生息しているアラスカの国立公園では、携帯が義務づけられているところもある。米国REIの通信販売や、アウトバック社(クマスプレーの輸入元、TEL 019-696-4647 )で購入できる。

   ベアーレジスタントコンテナ

 知床連山縦走路には、クマ対策食料庫があります。

 知床連山を縦走する際、おもに使われるキャンプ指定地は、三つ峰キャンプ地と二つ池キャンプ地です。三つ峰には、1998年7月、日本初のクマ対策食料庫が設置されました。食料庫は金属製の丈夫な構造で、クマに壊されない構造になっています。テントで寝るときには、食料・ゴミを匂いが出ないようにビニルでパックして、保管庫に入れて下さい。テント内に食料などを保管しないで下さい。

 クマが生息する北米の国立公園のキャンプ地では、食料庫の設置が常識ですが、日本ではまだ普及していません。三つ峰以外のキャンプ指定地にも、食料庫が順次整備される予定です。設置予定など問い合わせは環境庁知床国立公園管理官事務所(01522-4-2297)まで。


 ●農家の仕事では!!

 見通しの悪い所での作業に注意しましょう!

 畑の縁での雑草取りなど、やぶの近くでの作業時には、鈴など音を立てるものを携帯すると良いでしょう。


 家畜の死体や後産の処理は適切に!

 山林に近いところでは、家や畑に近いところに放置したり埋設すると、クマを誘引してしまいます。


 ●漁業番屋では!!

 ゴミを捨てないで!

 生ゴミの匂いが残らないように完全焼却すべきです。水産廃棄物の取扱いにもご注意ください。


 空き缶投げ捨てもダメ!

ジュースなどの匂いがついたものをかじって、学習してしまいます。最近の番屋被害では缶ジュースや缶ビールが集中的にねらわれています。封を切っていない、つまり、匂いが一切しない缶までねらうクマがいます。これは、投げ捨てられた空き缶で学習したものと考えられます。空き缶の投げ捨ては重大な結果を引き起こします。


 無人になる時は食料を一切置かないで!

 調味料や食用油などもすべて撤去してください。


 魚を干すとクマを誘引してしまいます!

 クマに絶対とられないような干し方を工夫しましょう。クマが出没している時はやめて下さい。



 [問い合わせ先]

斜里町自然保護係
係長・研究員 山中正実
〒099-4192 斜里郡斜里町本町12 斜里町自然保護係
TEL: 01522-3-3131(ext.124) FAX: 01522-2-2040

斜里町総務課 知床自然センター管理事務所
北海道斜里郡斜里町岩尾別531番地
TEL: 01522-4-2114 FAX: 01522-4-2115

参考:「知床サイト」知床の自然を紹介するホームページ。知床に行く前にぜひご覧ください。
http://www.muratasystem.or.jp/~kukuma/shiretoko/welcome.htm


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outback@cup.com