grizzly foot small大発見! 岩手県には2種類のツキノワグマがいるってホント!?grizzly foot small


 岩手県に生息するツキノワグマは、奥羽山系と北上山系で体の形態に差異があることが、農林水産省森林総合研究所東北支所(盛岡市)と東京大学海洋研究所(大槌町)などの調査で判明した。調査したのは森林総研東北支所鳥獣研究室の大井徹主任研究官と東京大学海洋研究所の天野雅男助手。大井研究官らは岩手県猟友会の協力を得て、県内で捕獲や有害鳥獣駆除されたツキノワグマ138体(奥羽山系62体、北上山系76体)の頭骨を分析。上あごの長さや幅、鼻骨の長さ、両目の間隔などを調べた。その結果、奥羽山系のグループは、北上山系のグループに比べて上あごや鼻骨が長く、上あごの幅や両目の間隔は短い傾向が見られた。奥羽山系のクマは「長めの顔」、北上山系のクマは「短めの顔」だった。

 差異が生じた要因は、生息域が分断され、長い歳月を経たためと考えられる。約1万5千年前に十和田湖周辺で噴火による火砕流が発生し、岩手県にも及んだとみられる。約1万年前には、気温の上昇で岩手県の県南の一部まで海が内陸に入り込んでいた(
縄文海浸)。これらが生息域分断に影響を与えた可能性もある。

 奥羽山系のクマ生息地は北東北(青森県下北半島)から関東以南までつながるが、北上山系は孤立していると見られる。色素異常のアルビノのツキノワグマは北上山系では
今年も含め何度か出現しているが、奥羽山系での報告例はない。大井研究官は「この現象も北上山系のクマの遺伝的な隔離を示す」とみている。

 岩手県は昭和62年度から3年間、県内のクマを調査し、生息数を約1,000頭と推定。生息数維持を図るため、狩猟や有害鳥獣駆除による年間捕獲頭数が160頭を越えないように、社団法人岩手県猟友会と申し合わせている。

 しかし、人間の居住地とクマの生息地が近く、地形的に入山が容易な
北上山系での捕獲頭数は、奥羽山系の4倍に上る。大井研究官は「それぞれの生息域ごとの保護管理を図る必要がある」と話している。

 北上山系の野生動物では、京都大霊長類研究所と森林総合研究東北支所が北上山系の五葉山(大船渡市、釜石市、三陸町などにまたがる山で、北限のホンシュウジカやニホンザル、ツキノワグマなどが生息している)周辺のニホンザルが国内他地域と異なる遺伝子を持つ集団であることを突き止めている。

 岩手県自然保護課は、「環境庁が平成12年8月に定めた特定鳥獣保護管理計画技術マニュアルは、クマについて生息域ごとに保護管理するべきという指針を示している。本県としては特に北上山系を考えていかなければならないと思う」と話す。岩手県が民間の研究団体(岩手県ツキノワグマ研究会)に委託し、現在実施中のツキノワグマ生息実態調査は平成12年度(来年3月末)で終了する。しかし、来春に生息数調査をあらためて実施する方向で、県は検討中だ。

 大井徹森林総合研究所主任研究官のコメント:奥羽山系と北上山系では、成長初期に完成する臼歯(きゅうし)列の長さにも違いがある。これは後天的要素ではなく、遺伝的に固定されていることを示唆する。

 天野雅男東京大学海洋研究所助手のコメント:統計的にはっきり差がでた。目で見て分かるぐらいの違いがある。日本の陸上哺乳類で、これだけ狭い範囲で差異が大きい例はないと思う。

※以上は『岩手日報』(平成12年9月27日 朝刊)の記事を元に作成いたしました。



grizzly foot small備考:以下は(有)アウトバックの藤村の勝手な独り言であります・・・

アルビノのツキノワグマ:これまでに岩手県の北上山系に位置している、住田町(有害鳥獣駆除で射殺され、剥製は岩手県立博物館が保存)、盛岡市(2000年6年2日岩手県盛岡市川目)、遠野市(詳細不明)などで発見されている。ただし、私が以前聞いた話では、新潟県内でもアルビノのツキノワグマが発見されたことがあるそうだ。ただし、詳細は不明。

阿武隈山系のツキノワグマ:阿武隈山系にはクマがいないとされていたが、ここ数年クマが住民に目撃されており、捕獲されてもいる。研究者の間ではあまり話題になっていないが、このクマのグループにも、奥羽山系のグループと比較して、形態的・遺伝的差異がありはしないだろうか。とても興味を引くところである。残念ながら、福島県内にはクマの研究者は不在である。いずれにしても、阿武隈山系のクマグループは、他の地域から孤立した個体群だと考えられる。(福島県はクマの有害鳥獣駆除頭数が多い県なので)福島県は環境庁の特定鳥獣保護管理計画技術マニュアルに沿っ たツキノワグマ生息実態調査の実施と、保護管理及び被害対策をお願いしたい。

謎を秘める北上山系:北上山系には他の東北地方の同種の生物と、遺伝子レベルで差異がある生物が生息しているそうだ。いったいどのような謎を、北上山系は秘めているのだろうか。また、北上山系にある岩泉町のひょうたん穴遺跡では、前期・中期旧石器時代の化石人骨の発見を目指して学術調査が行われている。

ハンターの観察眼と勘:北上山系と奥羽山系のツキノワグマが、形態的に大きな差 異があるという話を聞いた、遠野市のベテラン・ハンタ ーから、「やっぱりそうだったか。俺も遠野で獲ったクマと、奥羽山系のクマとは顔 つきが違うと前から思っていたんだ」と言われた。やっぱりハンターの観察眼と勘は 素晴らしいものだと感心した。


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