ツキノワグマ人身事故防止の通知
岩手県遠野市で平成13年6月9日に地元の男性がクマに襲われて死亡した事故を受け、岩手県自然保護課は6月12日に「ツキノワグマによる人身被害防止」の通知を県関係課・公所と市町村長に通知した。クマを引き寄せない方法、遭遇した場合の対処方法などを記した。通知は「昨年の堅果類の豊作が高い出産率を導き、攻撃性の高い子連れのグマの活動が活発になっていると推察される」と指摘。「夏の交尾期にかけてさらに人身被害の多発が懸念される」として、住民や農畜産行従事者らへの啓発を求めています。
岩手県自然保護課が県関係課・公所と市町村長に通知した「ツキノワグマによる人身被害防止」は、同日県政記者クラブでもプレス発表されています。以下にその全文を掲載いたします。
注意事項
・下記の文章は転載不可扱いでお願いいたします。
・お問い合わせは岩手県自然保護課にお願いいたします。
お問い合せ
岩手県生活環境部 自然保護課 野生生物係
〒020-8570 岩手県盛岡市内丸10-1
TEL:019(651)3111 内線5374
2001年6月17日
県政記者クラブ各位
環境生活部自然保護課長
ツキノワグマによる人身被害防止について
ツキノワグマによる人身被害については、本年度6月10日現在で人身被害が3件あり、うち1件の死亡事故が発生していることから、下記の県関係課・公所及び各市町村の長あて別紙のとおり通知しましたので、お知らせします。
なお、当該通知は、ツキノワグマによる人身被害の未然防止について、出没地域等の住民、農畜産業従事者、宿泊施設及び野外レジャー施設の使用者へ普及啓発する内容となっておりますので、当該主旨を広く県民に周知いただきますようお願いします。
記
県関係課・公所
商工企画室、観光課、農林水産企画室、団体指導課、農業普及技術課、農産園芸課、畜産課、資源循環推進室、各地方振興局保健福祉環境部
照会先
自然保護課野生生物係
眞島・清川 内線5374
別紙 県関係課・公所及び市町村あて通知
ツキノワグマによる人身被害防止について
ツキノワグマ(以下「クマ」という。)による人身被害防止については、ラジオ等を通じて県民に広報しているところでありますが、本年度は、6月10日現在で人身被害が3件発生し、うち1件は死亡事故となっております。
頻発する被害の原因は種々考えられますが、昨秋のミズナラ等の豊作が高い出産率を導き、より攻撃性の高い子連れグマの活動が、この春以降活発になっていることもその一因と推察されます。さらに今後、夏にかけて交尾期を迎えるため、クマの活動は、一段と活発になり、人身被害が多発することが懸念されます。
クマに出会ったときどうすればよいかは、そのときの地形、天候、クマの生理、個体によってそれぞれ異なるため、遭遇にいかに対処するかではなく、遭遇しないように最大限の努力を払うことが最も重要であると考えられます。
このことから、別紙を参考のうえ、市町村、農畜産業者、観光協会等団体、温泉等宿泊施設又は野外レジャー施設管理者などに対し、指導や啓発などを行われますようお願いします。
なお、各市町村に対しても別添写しのとおり通知しておりますので、申し添えます。
[別紙]
クマによる人身被害を防止するために
1 日頃の心構え
(1) クマを引き寄せないために
ア 人家の周りに残飯を無造作に捨てない。
一般の家ではコンポストの管理をきちんと行う。廃棄リンゴ等を適切に処分する。
イ キャンプ等でのゴミの管理を徹底する。
キャンプや登山、渓流釣り等で出たゴミは必ず持ち帰る。
2 入山のときの心構え
(1) クマと遭わないために
ア クマのいるところに行かない。
クマの糞、足跡などを見つけたら、すぐ引き返す、迂回する。山菜採りやキノコ採りで夢中になって山奥に入りすぎない。
イ 突然出遭わないようクマに自分の存在を知らせる。
クマは、人間より嗅覚が優れ、大抵、人より先に人間の接近を知り遠ざかるので、笛、鈴、ラジオ、テープレコーダーなど、音のするものを身につける。
ウ 朝夕、黎明薄暮時の行動を避ける。
朝夕のクマの行動が活発な時間帯は山中に入らない。
エ 単独行動は避ける。
単独行動はできるだけ避け、2人以上で行動する。
オ 霧、風音、川の流れがあるときは注意する。
山中でのこのような場面では、クマも注意力が散漫になるため、人の気配に気づかない。特に、高齢者の方は注意を要する。
カ 被害歴のある養蜂場、果樹園などで朝夕歩き回らない。
クマはそこから出て山に帰ろうとしている時間帯であるので危険である。
キ 子グマを見つけたらそっと立ち去る。
親グマが見えなくても近くにいるので、そっと立ち去る。
(2) 出遭ったときに興奮しない、興奮させないために
ア あわてない。
遠くにいるのを発見した場合は、そっと立ち去る。
イ 騒がない。
大声で叫んだり、石や棒切れを投げつけて興奮させない。
ウ そっと下がる。
クマから目を離さないようにして、できるだけゆっくりと後ずさりしながらクマから離れる。クマとの間に立木等の障害物を入れることができる位置に移動することで突進を防ぐこともできる。
エ 走って逃げない。
背中を見せて逃げるとクマは本能的に襲ってくるので、厳禁である。