ツキノワグマ誘引防止のための餌対策について
岩手県自然保護課が平成13年5月に県関係課・公所と市町村長に、「ツキノワグマ誘引防止のための餌対策について」を通知しました。そして、5月18日に県政記者クラブでそのことをプレス発表しました。詳細についてはこちらをご覧下さい。
クマの出没を防ぐためには、(1)クマを誘引している理由を調べ(可能で有れば専門家によって科学的に調査を行う)、(2)その誘引物を適切に処理(廃棄、移動、管理)することが重要です。しかしながら、我が国でクマ出没の問題が起きた場合の多くは、(1)と(2)が徹底して行われず、行政や警察による注意の喚起と、猟友会に自治体が委託して有害駆除が行われます。
(1)を実施するには、行政組織の中に野生動物保護管理を担当する専門組織・部署・システムと専門官が必要になります。また、それに伴い関係法令の整備や改正も必要になります。北米には野生生物保護管理局といった組織が連邦政府や各州ごとにあり、多くの野生生物の専門家が専門官やパークレンジャー、狩猟官等の公職で、野生動物と人との軋轢問題に積極的に取り組んでいます。残念なことに、日本政府や地方自治体には、その様な組織がほとんど整備されていません。
注意事項
・下記の文章は転載不可扱いでお願いいたします。
・お問い合わせは岩手県自然保護課にお願いいたします。
お問い合せ
岩手県生活環境部 自然保護課 野生生物係
〒020-8570 岩手県盛岡市内丸10-1
TEL:019(651)3111 内線5374
2001年9月18日
県政記者クラブ各位
環境生活部自然保護課
ツキノワグマ誘引防止のための餌対策について
最近、クマの人里への出没事例や人身被害が報告されていることから、下記の県関係課・公所及び各市町村長あて別紙のとおり通知しましたのでお知らせします。
なお、当該通知は、昨年度県関係機関に通知している「ツキノワグマ侵出防止のための廃棄農畜産物対策」に限定せず、クマの餌となりうるものを保有している出没地域等の住民、農畜産業従事者、宿泊施設及び野外レジャー施設などへの対策を指導するような内容となっておりますので、当該主旨を広く県民に周知いただきますようよろしくお願いいたします。
記
※ 県関係課・公所
商工企画室、観光課、農林水産企画室、団体指導課、農業普及技術課、農産園芸課、畜産課、資源循環推進課、各地方振興局保健福祉環境部
その原因としては、生息環境の悪化をはじめとして、多くの要因が考えられますが、一方では人間自ら誘引している事例が数多く見受けられます。
本県における最近の例でも、人間活動によって生じる生ゴミや残飯、廃棄リンゴや廃鳥に餌付いたり、家畜用飼料等に誘引される例が発生しており、それらの適正管理がツキノワグマを誘引しないための重要な対策と考えられます。
また、ツキノワグマは、一旦これらの採餌を学習すると、繰返し執着し、危険性を高めるため、有害駆除により殺処分されることがあります。
このように人間側に起因し被害を招いているものについて、不幸な出会いや駆除を防ぐため、下記に留意のうえ、市町村、農畜産業者、観光協会等団体、温泉等宿泊施設又は野外レジャー施設管理者などに対して、クマの餌となるうるものの適切な処理について、指導や啓発などを行われますようお願いします。
なお、各市町村に対しても別添写しのとおり通知しておりますので、申し添えます。
記
1 残飯等の処理方法
クマが目撃されている地域又は出没するおそれのある地域においては、残飯等を屋外に放置しないこと。また、一般のプラスチック容器、コンポスト等は、破壊されたり、残飯等は穴を掘って埋めても掘り返されたりするので、頑丈な容器又は施設内に保管するなどの措置を講ずること。
2 指導、啓発の要点
(1) 廃棄農畜産物の適正処理及び養豚場や養鶏場の餌又は餌用に保管している果樹などの適正な保管方法について指導すること。
(2) 温泉宿泊施設等に対し、立入り検査等により残飯等の適切な処理について指導すること。
(3) 観光協会等の施設管理者に対し、残飯等の適切な処理に対して会員・利用者への周知徹底を依頼すること。
(4) 野外レジャー施設(キャンプ場等)の管理者に対し、残飯等の適切な処理について指導すること。
(5) 山菜、キノコ採り、ハイキング等で山に行ったときは、残飯等は必ず持ち帰るよう啓発を図ること。
(6) 山野にある墓地の供物等は、放置して帰らず持ち帰るよう啓発を図ること。
(7)
住民に対して、残飯等の適切な処理について協力をお願いするとともに、広報等を通じて啓発に努めるよう依頼すること。