鮎の切り出し小刀 (Kiridashi Knife
of Ayu-fish)
※製造中止により、当社では既にお取り扱いしておりません。在庫もございませんので、予めご了承下さい。
●鋼材/日立安来鋼白上2号 ●全長/200mm ●ブレード長/50mm ●重量/100g ●柄/共柄 ●桐箱入り
鮎の切り出し小刀
三代助丸 碓氷金三郎・作(新潟県与板町)
越後の与板は、打刃物で有名な町である。今でも60軒以上もの刃物工場がある。その歴史は古く、戦国時代の天正6年(1587年)にさかのぼる。特に与板の鑿(ノミ)は徳川中期に刀鍛冶師によって作られた。その後、その優秀な技術と品質により、土肥鑿、兵部鑿として全国にその名を広めた。そして、今もなお全国の鑿の8割以上が、この与板町で生産されている。
鑿の本場にあって、屈指の名工と誉の高い三代目助丸・碓氷金三郎氏は、50年以上のキャリアを持つ、与板の鑿の名工・土肥宗蔵系の鑿鍛冶師である。特に大工道具を美術品(工芸刃物)として鍛え上げた功績は高く評価されており、通商産業省の卓越技能者、伝統工芸師の資格のほかにも、黄綬褒章(昭和61年)と勳六等瑞褒章(平成4年)をも受賞している。
今回ご紹介する『鮎の切り出し小刀』は、碓氷名人も特に気に入っている作品の一つである。作ったきっかけは、宮本武蔵や大岡越前などの時代小説で有名な、作家・吉川英治氏に進呈するためだ。青く光るするどい刃先とは対照的に、清流を泳ぐ天然の「鮎」をイメージさせる、なめらかな曲面とシンプルなデザインは、とても使いやすく機能的である。金属的なものを感じさせないその丸みを帯びた造りは、握った手にしっくりと馴染み、長時間作業しても手の疲労が少ない。機能性を究めた道具だけが持つ真の「美しさ」がそこにある。
「工芸刃物で大切なのは、なんといっても鋭い切れ味と形の美しさ、この両方を持ち合わせていることです。それから遊び心を取り入れてやることも…」という言葉に、名人の人柄と、優れた技に裏打ちされた職人の「粋」が感じられる。
バブル経済の崩壊で、高価なカスタム・ナイフがもてはやされた時代は終焉し、日本古来からの伝統を伝える和式刃物の良さが、再び見直されている。海外のマニアからも高い評価を受けている、熟練した職人の手による和式刃物こそが、今最も注目を浴びていと言える。
三代助丸の『鮎の切り出し小刀』は、名人の域に達した碓氷金三郎氏が、心と業を込めて鍛造した、粋な逸品である。
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