クマ被害防除法
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被害防除によるクマの保護と管理のすすめ/クマの捕獲数/クマ被害の分類/被害防除と保護・管理
被害防除の基本/被害防除法/イノシシ用括罠(くくりわな)対策の提案/被害防除のキーワード
山でクマに出会わない・襲われないためのアドバイス (「日経ネットナビ」1998年8月号で紹介されました)
クマ被害防除機器(電気柵)
海外特集・東モンタナでの取り組み/カレリアン・ベアードッグを利用した新しい熊撃退法
鳥獣保護及び狩猟に関する法律の改正について
クマ被害防除の専門書! 「生かして防ぐ クマの害」(米田一彦・著)絶賛発売中!
クマ対策フードロッカー
携帯用クマ対策食糧コンテナー
熊撃退スプレー“カウンターアソールト”
ヒグマとの遭遇時の対応に関するマニュアル
イノシシ駆除用の罠にツキノワグマが誤捕獲されるのを防ぐ方法の提案
カレリアン・ベアドッグを利用した人とクマとの軋轢解消(被害対策)の紹介
・長野県軽井沢町のNPO法人ピッキオでは、平成16年からカレリアン・ベアドッグを利用したツキノワグマ被害対策を実施し、効果を上げています。詳細はピッキオのウェブページをご覧下さい。
NPO法人ピッキオ http://npo.picchio.jp
・カレリアン・ベアドッグの写真はこちらで御覧いただけます。
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◆「取扱商品」のコーナーに「野生動物被害防除機器」を作りましたので、併せてご覧ください。
カレリアン・ベアードッグ
ツキノワグマに荒らされたデントコーン畑(1998年8月18日撮影・岩手県沢内村)
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アウトバック 代表 藤村 正樹
平成8年は北海道の知床半島から本州最南端の山口県に至まで、ほぼ全国的にクマの人里周辺への出没が多発し、それにともなってクマによる様々な被害やトラブルが多発しました。しかし、このことは平成7年の段階で、既に一部のクマの研究者はある程度予測していたので、各地の行政に対して警告を発し続けてきました。
残念なことに、警告は十分活かされませんでした。平成8年はクマと人とのトラブルが全国各地で多発し、農作物の被害も増え、例年よりも多くのクマが、有害鳥獣駆除で捕殺されました。
平成9年は、秋になってからのクマの出没と被害が、予想していたよりも少ない年でした。これらの原因は、気温や天候、日照時間、餌となる山の実りの不作、豊作など、様々な要因が複雑に絡み合っているので、簡単且つ確実に、クマの出没を予測することはできません。ただし、その研究を続けている研究者もいるので、近い将来、クマの出没や被害発生を、気象庁の長期予報程度は予測できるようになるでしょう。
さて、当社がクマ撃退スプレー『カウンターアソールト』(アメリカ製)を日本に輸入し始めてから、既に9年になります。当時は、限られた一部のクマの研究者以外には、まだ日本で 知られていなかったこの商品も、今ではあちこちのキャンプ用品店や釣具店でも販売されるようになりました。また、主にクマの被害防除のために、各地の行政関係者にも利用いただいております。特に奥山放獣の際に「お仕置き」に使用され、クマ被害防除に効果を上げています。
現在、クマ避け鈴やクマ避けホイッスル、各種電気牧柵をはじめ、センサー連動の超音波による動物追い払い装置、忌避劑など、さまざまな被害防除機器の輸入や販売をしております。そのほかにも、当社はクマ被害の現場視察や情報収集、被害防除法の研究や実験、被害防除法の行政や一般への普及と啓蒙、講演などを行っております。
この『被害防除によるクマの保護と管理のすすめ』は、平成8年3月に兵庫県養父郡関宮町で開かれた、『第1回東中国クマ集会』での講演の要旨をまとめ、その後少しずつ加筆、修正したものです。皆様の参考になれば幸いです。
もし、被害防除法や被害防除機器について、不明な点や疑問があれば、お気軽にお問い合わせください。
平成10年5月20日
1.クマの捕獲数
昭和40年(1965年)から平成7年(1995年)までの30年間に、73,970頭のツキノワグマとヒグマが狩猟と有害鳥獣駆除によって捕獲されている。この内、有害鳥獣駆除(春熊の予殺駆除や、殺さずに放逐する奥山放獣も含む)による捕獲数は42,197頭で、全体の約57%を占める。(環境庁の資料を元に計算した数値を使用)
「被害発生=有害駆除」のパターンが多い。クマの人里への出没や、果樹などの被害を何らかの方法で効果的に食い止めることができれば(成功例は岩手県遠野市や長野県内、広島県戸河内町、島根県匹見町、北海道斜里町など)、有害駆除による捕殺頭数を減らすことができる。よって、効果的な被害防除法の実践(専門家のアドバイスによる行政の積極的な取組み)が、クマの被害を減らし、クマを正しく保護及び管理するために必要不可欠である。
2.クマ被害の分類
@人身被害(死亡事故を含む)
A剥皮被害(皮はぎ)による西日本を中心とした造林、林業被害
Bリンゴ、柿、梨、桃、栗、ビワ、ブドウ、プラムなどの果樹被害
Cスイカ、デントコーン(とうもろこし)、スウィートコーン、カボチャなどの野菜や、米などの農作物被害
Dデントコーンや配合飼料の食害や、牛、馬、豚、羊、鶏等が食害を受ける酪農被害
E養蜂被害
F人家などの建築物への侵入や、建築物が壊される被害
G精神的被害(集落の周辺や、住宅地の中、学童の通学路などに出没するなど)
Hその他の被害(養魚場の被害、人家・観光施設・キャンプ場・山小屋などのゴミ捨て場を荒らす、コンポストを荒らす、お墓のお供え物が荒されるなど)
3.被害防除と保護・管理
クマを殺すことを前提とした被害防除か、クマの保護・管理(奥山放獣、学術調査を含む)を前提とした被害防除かによって、自ずと取組方は異なる。被害が効果的に減少するのは後者である。
ほとんどの行政や被害者(農家、林業家、養蜂家など)は、自分たちで努力をあまりせず、有害鳥獣駆除(猟友会のボランティア)に頼り過ぎている。これでは「クマの被害を防ぐ」という目的は達成できない。
これまで有害鳥獣駆除が延々続けられてきたにもかかわらず、クマの出没や被害は減っただろうか。逆にクマは人間の生活圏に接近し、被害が増加しているではないか。有害鳥獣駆除も大切な選択肢の一つであるが、クマの生息数を減少させても、それだけではクマによる被害を防ぐことはできない。
なぜクマが里に出没するのか、なぜ被害が毎年発生するのか、その原因を科学的に調査し、その原因を取り除く努力を続ける。そして、既に実績のある効果的な防除手段を、積極的に取り入れる。専門家の助言や指導を受ける。これらのことを行政も、被害者も実践しなしていけば、クマによる被害や出没は必ず減少します。
4.被害防除の基本
@被害がなぜ発生するのか(根本的原因)、どのようにして被害が発生したのか(被害発生のメカニズム)を科学的に解明する。そのための科学的な調査や、長期的なデータ収集と科学的な分析に、専門家の協力が必要となる。
A根本的原因の除去(例:生息環境の悪化→保護区の設定や生息環境の保全、餌不足→シバグリやブナ等の植林、生ゴミなど誘引物質の除去)。
B(@で得られたデータとその分析を元に)被害に応じた、地域にあった被害防除法の実施。
Cキーワード:クマの保護・管理と被害防除はワンセット。
5.被害防除法
@人身被害
a.資料(リーフレット、冊子、チラシ、看板、市町村広報、農協だよりなど)を作成し、クマの正しい生態や、被害防止対策の啓蒙と普及を徹底させる。
※資料の作成に際し、実際に野外でクマの生態調査を行っている研究者や専門家、クマ猟の経験のあるハンター、クマによる人身被害経験者からのアドバイスは必要。
※予算がなければ高級紙を使ったり、高価なカラーオフセット印刷を使う必要ない。中味が充実した正しい情報、豊富な表現と解りやすい資料(例:「ヒグマを知ろう」北海道保健環境部自然保護課作成、「東中国山地のツキノワグマ」同パンフレット作成委員会のパンフレット)が望ましい。
b.鳴り物(クマよけ鈴、ホイッスルなど)の携帯…人間の存在をクマに知らせ、未然にクマとの遭遇を防止する。大きな音、高い音調のものが効果有り。
c.クマ撃退スプレー「カウンターアソールト」の携帯…クマに攻撃されたときに使用し、クマを追い払う。トウガラシエキスのガスが6m〜9m噴射する。
d.ゴミや空き缶など、誘因物を野外に捨てない。ホテルや旅館、山小屋などのゴミの処理を徹底させる。
e.キャンプや登山、その他にも熊の生息地での短期、長期の滞在
→ BEAR RESISTANT
CONTAINER
(写真/クマ防除携帯用食料コンテナ) の利用。(北米、知床)
熊に食料を食べられないたために米国で開発された丈夫な食料コンテナ。お問い合せはアウトバックまで。
A剥皮被害
a.ビニールテープやトタンを樹木に巻く。
b.忌避剤の散布。
c.電気牧柵。
B果樹被害、C農業被害、D酪農被害
a.電気牧柵
b.超音波発生装置(センサー連動式)
c.忌避剤の散布
d.クマ撃退スプレー(センサー連動の無人噴霧装置もある)
e.奥山放獣(経験者からのアドバイスと、クマ撃退スプレーによるお仕置きが必要)
f.生ゴミや破棄した野菜や果物などの誘因物の除去。
g.トタンを幹に巻く
E養蜂被害
a.電気牧柵
※クマ被害防除に実績のある電気牧柵を選ぶ。家畜用の電牧柵の流用品では役にたたない。
※クマ被害防除の知識と経験のあるメーカーのものを選ぶ。
b.奥山放獣(経験者からのアドバイスと、クマ撃退スプレーによるお仕置きが必要)
F建築物への侵入や建築物が壊される被害
a.クマの誘因物の除去、移動(蜜蜂や雀蜂の巣、生ごみなど)。
b.電気牧柵
c.奥山放獣(経験者からのアドバイスと、クマ撃退スプレーによるお仕置きが必要)
G精神的被害
a.資料(リーフレット、冊子、チラシ、看板、市町村広報、農協だよりなど)を作成し、クマの正しい生態や、被害防止対策の啓蒙と普及を徹底させる。
b.鳴り物を学童に支給する。
c.奥山放獣(クマ撃退スプレーによる強制学習が必要)
d.専門家の現地への派遣し、被害者の苦情を聞くことが大切。
e.ゴミや空き缶など、誘因物を家のそばに置かない。
6.イノシシ用括罠(くくりわな)対策の提案
イノシシ用括罠(くくりわな)にクマが誤ってかかった場合、結果的に駆除される場合が多い。学術調査などの目的で、環境庁長官の特別な許可がある場合を除き、括罠(くくりわな)や直径15cm以上のトラバサミによるクマの捕獲は法律で禁じられている。
a.括罠以外のイノシシ捕獲法の開発と普及。
イノシシ捕獲用の箱檻(箱罠)に誤ってクマがかかり、そのクマを捕殺する例が増えている(平成12年に宮城県仙台市でも発生)。これはまったくの違法である。滋賀県の獣害総合研究所の高木直樹代表の実験によると、イノシシ捕獲用の箱檻(箱罠)の天井部にクマが逃げることができるように、丸い穴を開ければ、イノシシは逃げることができないが、誤って捕獲されたクマは逃げることができるそうだ。また群馬県の(社)桐生猟友会野生動物保護管理委員会でも、これと同じようなクマの誤捕獲を防ぐイノシシ捕獲用の箱檻(箱罠)を作り、平成12年からイノシシ対策に使用している。
今後は、イノシシとツキノワグマが生息している地域内で、イノシシの有害鳥獣駆除を行うときには、天井部にクマ逃避用の穴を開けた箱檻(箱罠)を使用するように、鳥獣保護及ビ狩猟ニ関スル法律に定めたらいかがなものか。
b.クマが誤って捕獲されない括罠の開発と普及。
どうしてもイノシシを括り罠で有害鳥獣駆除する場合には、ワイヤーを最低でも4mm,
あるいは5mmの太いものを使用する。誤ってクマが罠にかかっても、ダメージを減らすためだ。それでも、イノシシの有害鳥獣駆除の許可を得て、クマを誤って罠にかけた時点で狩猟法に違反したことになる。よって、速やかに役場や県の出先機関と相談し、獣医もしくはクマの専門家にお願いして、クマを麻酔で眠らせ罠を外してから放獣すること。誤って捕獲したクマを、許可を受けずに殺しすことは密猟と同じである(イノシシの有害鳥獣駆除許可を出し、その罠にクマが誤ってかかってから、慌ててクマの有害鳥獣駆除許可を出すこと自体にも問題があると思うが)。狩猟免許が没収された上、罰金や禁固刑など処罰されることになるので注意が必要である。
c.市町村で麻酔銃を用意し、クマが誤って.括罠で捕獲された場合は、原則として殺さずに、麻酔で眠らせて奥山放獣する。
◆ご質問、お問い合わせは有限会社アウトバックの藤村までお願いします。
有限会社アウトバック
〒020-0401 岩手県盛岡市手代森16-27-1
TEL:019-696-4647 FAX:019-696-4678
outback@cup.com
7.キーワードはネットワーク
形式だけの被害対策では効果無し。今後は野生動物(クマ)の研究者や専門家を、野性動物管理官として行政が抱える必要がある(実践例:北海道斜里町、北海道環境保健部など)。
行政、ハンター、研究者、防除機器の専門家、市民団体、被害者、警察や消防署、学校、獣医達でネットワークを作り、効果的な対策を検討し、実施することも必要である。
また、同じ問題を抱えている他の市町村や都道府県との情報の交換も、クマの被害防除を効果的に推進する上で有効である。クマに関係したシンポジウムや研究会、勉強会等の集まりが、毎年各地で各地で開催されている。研究者や行政、猟友会、被害農家、市民団体などのネットワークも広がりつつある。そのような会合に積極的に参加し、各地の取組や動向、最新の被害防除方法などの情報を得ることも必要である。
「捕獲放逐」・「お仕置き」・「ドラム缶罠」についての情報は、『信州ツキノワグマ研究会』のホームページに、写真入りで詳しく載っていますので、ぜひそちらもご覧ください。
URL http://www.shiojiri.ne.jp/~koyama/index.html/
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